「もう少し安くならない?」と言われて、つい下げてしまう。すぐに値下げしないための、考え方と切り返しの手順です。
公開日:2026年10月26日|文:村尾 政則
商談の終盤で「もう少し安くなりませんか」と言われると、多くの営業担当者は一瞬、言葉に詰まります。ここで断ったら、せっかくの話が流れてしまうかもしれない。そう思うと、つい「上に確認します」「少しなら調整できます」と答えてしまいます。
その場では契約が決まり、ほっとします。けれども、一度下げた価格は、次の商談でも「前は下がった」という前提で語られます。値引きの対応が一人ひとりの判断に任されている会社ほど、利益が少しずつ削られていきます。
値引きの相談は、「安くしてくれなければ買わない」という意味とは限りません。背景には、いくつかの気持ちが隠れています。
理由によって、適した答え方はまったく違います。理由を聞かないまま値引きの金額の話を始めてしまうことが、よくある失敗です。お客様が何に引っかかっているのかが分かれば、金額以外の答えが見えてきます。
「価格のご相談ですね。ありがとうございます」と、いったん受け止めます。そのうえで「差し支えなければ、ご予算の目安や、気になっている点を教えていただけますか」と尋ねます。ここで本当の理由が分かれば、値引き以外の答えが見つかることもあります。
お客様が悩んでいる課題と、その解決に提案がどう役立つかを、もう一度確認します。価格は、価値との釣り合いで判断されるものです。価値が十分に伝わっていれば、値引きの話は小さくなります。逆に、価値が伝わっていないまま値下げしても、お客様の迷いは消えません。
どうしても調整するなら、何も引き換えにせずに金額だけを下げないことが大切です。契約期間を長くする、支払い方法をまとめる、内容を絞って金額を合わせる、といった形で、お互いにとって筋の通る条件を添えます。ただし、会社として決めた範囲を超える判断は、担当者ひとりで抱えないようにしましょう。
断ること自体が目的ではありません。お客様との関係を保ったまま、納得して決めていただくことが目的です。たとえば次のような言い方があります。
相手を否定せず、できることとできないことを正直に伝える。この姿勢が、価格交渉の場面でも信頼を残します。
約28年、営業と組織づくりの現場にいた経験から言えるのは、値引きへの対応が上手な人は、話術が特別に優れているというより、自分の商品の価値を、お客様の言葉で説明できる人だということです。
最下位だったメンバーが3か月で全国10位以内に入ったとき、変わったのは本人の能力ではなく、環境と役割でした。値引きの場面も同じです。一人ひとりが怖がりながら判断するのではなく、会社として「ここまでは調整できる」「この場合は価値を伝え直す」という基準と切り返しの型を持っていれば、経験の浅い人でも落ち着いて対応できます。
値引きの判断が担当者ごとに違う状態は、営業の属人化の一つの形です。属人化の考え方は、業務の属人化は、どう解消するかでも整理しています。
個人の頑張りに頼らず、組織で対応するために、次の3つを決めておくと役に立ちます。
基準は、一度つくって終わりではありません。値引きを求められた場面を振り返り、どの質問が効いたか、どこで迷ったかを話し合う時間を、短くてもよいので定期的に取りましょう。実際の商談で使ってみて、うまくいった言い方を共有し、チームの言葉として育てていくと、営業全体の力が底上げされます。
値引きを求められたとき、すぐに下げることも、一方的に断ることも、よい答えとは限りません。まず理由を聞き、価値に話を戻し、調整するなら条件と一緒に考える。この順番を型にしておけば、落ち着いて対応できます。営業の進め方を組織全体で整える支援は、営業・組織支援のページで紹介しています。お客様のタイプ別の台本は、お客様タイプ別 営業トーク台本集にまとめています。