同じ説明をしても、響くお客様とそうでないお客様がいる。相手に合わせて話し方を変えるための、考え方と進め方です。
公開日:2026年11月4日|文:村尾 政則
丁寧に説明したのに、お客様の反応が薄い。別のお客様には同じ話でよく伝わった。営業をしていると、こんな経験は少なくありません。
「自分の説明が下手なのかもしれない」と悩む方もいますが、多くの場合、原因は説明のうまい・下手ではありません。お客様が知りたいことと、こちらが話していることが、ずれているのです。
営業は、どうしても自分が話しやすい型で話してしまいます。順序立てて説明するのが得意な人は、誰にでも順序立てて説明します。熱意で押すのが得意な人は、誰にでも熱意で押します。
しかしお客様は、一人ひとり判断の仕方が違います。数字や根拠を見て納得する人もいれば、担当者への安心感で決める人もいます。早く結論を知りたい人もいれば、じっくり選びたい人もいます。話し方を変えないままでは、合う人にだけ伝わり、合わない人には伝わりません。
見分けるといっても、診断のように結論を急ぐ必要はありません。会話の最初の数分で、少しずつ仮説を立てていく感覚で十分です。
ここでいう「タイプ」は、血液型のような決めつけの分類ではありません。会話の中で見えてくる、相手の関心の向きを大まかにつかむための目安です。
費用、手間、失敗しないか、周りにどう説明するか。質問の中身に、お客様が気にしていることが表れます。最初の数分は、説明よりも質問に使うと見えやすくなります。
結論から聞きたい人は、短い答えを求めます。経緯から話す人は、聞いてもらうこと自体を大切にしています。相手の話す順番に合わせると、会話が進みやすくなります。
その場で決める人、持ち帰って検討する人、周囲に確認してから決める人がいます。決め方を早めに知っておくと、資料や次の約束の組み立てが変わります。
お客様の関心が見えてきたら、次は伝え方を整えます。ここでも、全員に同じ話し方をしないことが出発点です。ひとつのお客様に合わせた話し方が、別のお客様にはそのまま通用しないこともあるからです。
タイプが見えたら、話し方を少しだけ変えます。大きく人格を変える必要はありません。
大切なのは、タイプを当てることではなく、相手に合わない話し方を続けないことです。外れたと感じたら、すぐ切り替えれば問題ありません。
なお、タイプの見立てはあくまで仮説です。会話の途中で印象が変わったら、見立てを直して構いません。
約28年、営業と組織づくりの現場にいた経験から言えるのは、成果を出す人が、特別な才能を持っているとは限らない、ということです。強みを活かせる環境と合った役割、周囲の力を掛け合わせられる仕組みがあれば、人は大きく変わります。
相手に合わせて話し方を変えることも同じです。センスや勘に任せず、お客様の反応と有効だった話し方を言葉にして共有すれば、チーム全体の力になります。ただし、その進め方は会社ごとに違うため、自社のお客様と営業の様子に合わせて整えることが大切です。個人技にしないことは、「上に相談します」と言われたときの切り返しでも触れています。
まず、商談のあとに「どんなお客様に、どの話し方が響いたか」を一言ずつ残します。難しい記録は不要です。お客様の関心と、効いた一言をメモする程度で十分です。
次に、集まったメモを月に一度、チームで見返します。同じ関心を持つお客様に有効だった話し方が重なっていれば、それがチームの引き出しになります。新しいメンバーも、先輩の話し方を型として真似できます。
記録は短くてかまいません。続けやすい形にすることが、いちばん大切です。
こうした記録を続けると、「この話し方が合うお客様」「合わなかった場面」が少しずつ言葉になっていきます。言葉になったものは、研修や同行営業の場でも共有しやすくなり、経験の浅いメンバーの手助けになります。
営業の話し方は、うまい・下手ではなく、相手の関心に合っているかどうかで伝わり方が変わります。お客様の気にしていること、話す順番、決め方の3つを見て、話し方を少し調整してみてください。そして、うまくいった話し方はチームの共有財産にしていくと、営業は安定していきます。お客様のタイプ別の台本は、お客様タイプ別 営業トーク台本集にまとめています。
具体的な支援内容は、営業・組織支援のページで紹介しています。