商談の最後に「上に相談します」と言われて、返事が止まってしまう。そんなときに慌てず動くための、考え方と切り返しの手順です。
公開日:2026年10月30日|文:村尾 政則
手応えのある商談だったのに、最後に「上に相談して、またご連絡します」と言われる。営業をしていれば、誰でも一度は経験する場面です。
その場では「よろしくお願いします」と笑顔で終わらせるしかなく、あとは連絡を待つだけになりがちです。待っている間に話が自然に消えてしまい、「あの案件はどうなったのだろう」と気になり続ける。こうした悩みは、営業担当者だけでなく、チームをまとめる経営者にも共通しています。
この言葉は、断りの合図だとは限りません。背景には、次のような事情が隠れています。
どの理由なのかによって、取るべき行動は変わります。理由が分からないまま「お待ちしています」と答えてしまうことが、いちばんもったいない対応です。
「上に相談します」と言われたら、押し返すのではなく、状況を教えてもらう気持ちで質問します。
「ご相談される方は、どなたになりますか」「いつ頃までにお決めになる予定でしょうか」と、やわらかく尋ねます。決める人の役職や、判断の時期が分かるだけで、次の動き方が見えてきます。
「上の方は、どのあたりを気にされそうですか」と聞いてみましょう。価格なのか、導入後の手間なのか、効果なのか。担当者自身の言葉で語ってもらうと、足りなかった説明が見つかります。
「ご相談の際に使える資料をお作りしましょうか」と申し出ます。担当者は、社内で上司に説明する立場です。その負担を軽くする姿勢が、信頼につながります。
担当者に、あなたの代わりに上司へ説明してもらうことになります。商談で話した内容を、そのまま上司に伝えるのは簡単ではありません。そこで、次のような形で材料を整えて渡します。
専門用語は避け、初めて話を聞く人にも分かる言葉で書きます。お客様の言葉をそのまま使うと、社内での共感が得やすくなります。
「ご連絡をお待ちしています」だけで終えると、主導権が相手に移ったままです。その場で、次の一歩を小さく決めておきましょう。
たとえば「ご相談の結果を、来週のどこかで5分だけお電話でうかがってもよろしいですか」と、日にちの目安を添えて尋ねます。相手に負担をかけず、こちらが連絡する理由も自然にできます。急かすのではなく、「お返事の都合に合わせて動かせてください」という姿勢で伝えるのがコツです。
返事が思ったより遅いときも、焦る必要はありません。社内の検討には時間がかかるものです。連絡するときは「いかがでしょうか」と結果だけを尋ねるのではなく、「前回のご相談で出た点について、補足の資料を用意しました」と、相手の役に立つ話題を添えると、気持ちよく返事をもらいやすくなります。
値引きの相談でも、お客様の本音を聞いてから答えることが大切でした。考え方が近いので、値引きを求められたとき、どう切り返すかもあわせてご覧ください。
また、断られたと感じたときも、理由を教えてもらえるかどうかで次につながります。「今回は見送りになった理由を教えていただけると、今後の参考になります」と、感謝を添えて尋ねてみましょう。答えにくそうなら、無理に聞き出す必要はありません。
約28年、営業と組織づくりの現場にいた経験から言えるのは、保留の場面での動き方に、会社としての型がないケースが多いということです。上手な人は無意識に理由を探り、次の約束を取っていますが、その動きが言葉になっていないと、他のメンバーには伝わりません。
最下位だったメンバーが3か月で全国10位以内に入ったとき、変わったのは本人の能力ではなく、環境と役割でした。保留への対応も同じで、「何を聞くか」「何を渡すか」「次に何を決めるか」をチームで共有しておけば、経験の浅い担当者でも落ち着いて動けます。
「上に相談します」は、終わりの言葉ではなく、商談の続きの合図です。誰が決めるのかを確かめ、相談相手が気にする点を知り、伝わる材料を渡し、次の約束を小さく決めておく。この流れを型にしておけば、保留のあとの連絡も自然に進められます。営業の進め方を組織全体で整える支援は、営業・組織支援のページで紹介しています。お客様のタイプ別の台本は、お客様タイプ別 営業トーク台本集にまとめています。